新築のマイホーム、特に頑丈なベロ基礎で建てられた家は、シロアリとは無縁だと考えていませんか。
実は、その考えには大きな落とし穴が潜んでいる可能性があります。
現代の住宅で主流となっているベタ基礎は、確かにシロアリ対策として非常に有効な工法の一つです。
しかし、決して万能ではなく、意外な弱点からシロアリの侵入を許してしまうケースが後を絶ちません。
この記事では、新築のシロアリのベタ基礎に関する正しい知識を深めていただくことを目的としています。
なぜベタ基礎でも安心できないのか、その具体的な侵入経路や構造上の弱点について、専門的な視点から詳しく解説していきます。
また、近年普及している基礎断熱がシロアリ被害のリスクを高める理由や、コンクリートのわずかな隙間がどのようにして脅威となるのかも掘り下げます。
さらに、被害を未然に防ぐための効果的な予防策、万が一被害に遭ってしまった際の駆除方法、そしてそれらにかかる費用や保証制度についても網羅的にご紹介します。
大切な資産であるマイホームを長く守るためには、定期的な点検がいかに重要であるかもお伝えします。
この記事を最後までお読みいただくことで、新築のシロアリのベタ基礎に関する不安が解消され、具体的で効果的な対策を講じるための一歩を踏み出せるはずです。
- ➤ベタ基礎がシロアリに強いと言われる本当の理由
- ➤ベタ基礎に潜むシロアリの意外な侵入経路
- ➤基礎断熱がシロアリ被害のリスクを高める仕組み
- ➤新築時に実施すべき効果的なシロアリ予防策
- ➤シロアリ対策にかかる具体的な費用相場
- ➤被害発見後の正しい駆除方法と対処法
- ➤知っておくべきシロアリ保証の内容と注意点
新築のシロアリのベタ基礎が持つ意外な弱点
- ➤ベタ基礎でも安心できないシロアリの侵入経路
- ➤コンクリートの隙間から侵入される可能性
- ➤シロアリ被害を招く基礎断熱の落とし穴
- ➤構造上の弱点を知り早期発見につなげる
- ➤被害を防ぐために重要な定期的な点検
ベタ基礎でも安心できないシロアリの侵入経路
新築のシロアリのベタ基礎は、地面全体をコンクリートで覆うため、シロアリが床下へ侵入しにくい構造として知られています。
従来の布基礎と比較して、地面が露出している部分がないため、防蟻性においては格段に高い性能を持つと言えるでしょう。
しかしながら、この頑丈なベタ基礎にも、シロアリが侵入するための経路が存在するのです。
決して無敵ではないという事実を、まずは認識しなくてはなりません。
シロアリは非常に小さな生き物であり、わずか1mmに満たない隙間さえあれば、どこからでも侵入することが可能です。
その代表的な侵入経路として挙げられるのが、基礎の配管貫通部です。
給排水管やガス管などを通すために、基礎コンクリートには必ず貫通している部分があります。
施工時にその隙間をモルタルやシール材で埋めるものの、経年劣化や地震の揺れなどによって、コンクリートと配管の間に微細な隙間が生じることがあります。
シロアリは、このわずかな隙間を見逃しません。
地中からやってきたシロアリは、配管の表面を伝って基礎内部へと侵入し、被害を拡大させるのです。
また、基礎の打ち継ぎ部分も注意が必要なポイントと言えます。
ベタ基礎は、底盤(スラブ)と立ち上がり部分を別々にコンクリート打設することがあり、その接合部分が打ち継ぎとなります。
この打ち継ぎ部分は、一体で打設する場合と比較して、構造的に弱点となりやすい箇所です。
完全に密着していない場合に生じる微細な隙間が、シロアリにとって格好の侵入経路となってしまうのです。
さらに、玄関ポーチや勝手口の土間コンクリート部分もリスクが高い場所でしょう。
これらの部分は、建物の基礎とは別に作られることが多く、基礎との間に隙間が生じやすい傾向にあります。
特に、土間コンクリートの下は土壌であり、シロアリが生息しやすい環境です。
そこから基礎との隙間を通り、建物内部へ侵入するケースは少なくありません。
これらの侵入経路は、いずれも目視での確認が難しい場所に存在します。
だからこそ、ベタ基礎だからと油断せず、専門家による定期的な点検が不可欠となるわけです。
コンクリートの隙間から侵入される可能性
ベタ基礎の主成分であるコンクリートは、非常に強固でシロアリが直接食べることはできません。
しかし、コンクリート自体に発生する「隙間」が、シロアリの侵入を許す大きな原因となります。
この隙間は、いくつかの要因によって発生します。
まず考えられるのが、コンクリートの乾燥収縮によるひび割れ(クラック)です。
打設された直後のコンクリートは水分を多く含んでいますが、時間をかけて乾燥していく過程で収縮し、表面に細かなひび割れが生じることがあります。
これはヘアークラックとも呼ばれ、構造的な強度には影響しない軽微なものが多いです。
ですが、シロアリにとっては幅が0.5mm程度のクラックであっても、十分な侵入経路となり得ます。
特に、基礎の角や開口部の周りは応力が集中しやすく、ひび割れが発生しやすい場所なので注意が必要です。
次に、地震などの外的要因によるひび割れも無視できません。
日本は地震大国であり、新築の住宅であっても、大小さまざまな揺れに絶えず晒されています。
大きな地震はもちろんのこと、繰り返される小さな揺れであっても、基礎コンクリートにダメージを蓄積させ、新たなひび割れを生じさせたり、既存のクラックを広げたりする可能性があります。
一度ひび割れが生じると、そこから雨水が浸入し、コンクリートの中性化を促進させて耐久性を低下させる悪循環にもつながります。
さらに、施工時の品質管理も隙間を生む一因となることがあります。
例えば、コンクリートを打設する際に空気が混入してできる「ジャンカ」と呼ばれる空洞部分です。
ジャンカはコンクリートの密度が低く、スカスカの状態になっているため、シロアリが容易に通り抜けられる弱点となります。
見た目には問題がなくても、内部にこうした欠陥を抱えている可能性はゼロではありません。
このように、強固に見えるコンクリートも、実際にはさまざまな要因で隙間が生じるリスクを抱えています。
シロアリは地中の暗い場所を好み、常に餌となる木材を探して活動しています。
基礎コンクリートに生じたわずかな隙間は、彼らにとって建物内部へと続く光の差さない道となり、格好のターゲットにされてしまうのです。
新築のシロアリのベタ基礎だからといって、コンクリートの存在だけで安心するのは早計と言えるでしょう。
シロアリ被害を招く基礎断熱の落とし穴
近年の住宅は、省エネルギー性能を高めるために高気密・高断熱化が進んでいます。
その一環として、床下空間の温度を安定させる目的で「基礎断熱」を採用する住宅が増加しました。
基礎断熱は、基礎の立ち上がり部分の内側や外側に断熱材を施工する工法です。
床下を室内空間の一部と捉えることで、冬の底冷えを防ぎ、夏の熱気を遮断する効果が期待できます。
しかし、この快適な住環境を実現するための基礎断熱が、皮肉にもシロアリ被害の温床となる重大なリスクをはらんでいるのです。
問題となるのは、断熱材として広く使用されている発泡プラスチック系の素材、例えばポリスチレンフォームなどです。
これらの断熱材は、シロアリにとって格好の通り道となります。
シロアリは断熱材を栄養源にはしませんが、柔らかく加工しやすいため、内部を自由にくり抜いて巣(コロニー)を作ったり、侵入経路である蟻道(ぎどう)を構築したりします。
特に問題なのが、基礎の外側に断熱材を施工する「基礎外断熱」です。
この工法では、断熱材が地面と接しているため、地中からやってきたシロアリが容易に断熱材の内部に侵入できます。
断熱材の内部に蟻道が作られてしまうと、外からは全く発見することができません。
気づいたときには、断熱材を通り抜けたシロアリが土台や柱にまで到達し、深刻な被害を引き起こしているケースが非常に多いのです。
断熱材は、シロアリにとって外的(天敵であるアリなど)から身を守るシェルターの役割も果たします。
さらに、断熱性能が高いため、冬でも温度が安定しており、シロアリが一年中活動しやすい快適な環境を提供してしまいます。
基礎断熱を採用している住宅では、従来の床下点検口からの目視点検だけでは、シロアリの侵入を発見することが極めて困難になります。
断熱材の裏側や内部で被害が進行するため、被害が表面化する頃には手遅れになっていることも少なくありません。
このようなリスクから、現在では防蟻性能を持つ断熱材の使用や、シロアリが侵入しにくい施工方法の導入が進められています。
しかし、それでもリスクが完全になくなるわけではありません。
新築のシロアリのベタ基礎において基礎断熱を採用する場合は、そのリスクを十分に理解し、専門業者による入念な防蟻対策と、定期的な特殊な点検が必要不可欠です。
構造上の弱点を知り早期発見につなげる
新築のシロアリのベタ基礎であっても、これまで述べてきたように、いくつかの構造上の弱点が存在します。
これらの弱点を正しく理解しておくことは、シロアリ被害の早期発見と予防対策を講じる上で非常に重要です。
弱点を把握し、日頃から意識的にチェックすることで、被害が深刻化する前に対処できる可能性が高まります。
改めて、構造上の弱点となりやすい箇所を整理してみましょう。
- 配管貫通部:給排水管やガス管が基礎を貫通する部分の隙間
- 打ち継ぎ部:基礎の底盤と立ち上がり部分を接合した箇所
- 玄関・勝手口の土間:建物の基礎と土間コンクリートの間の隙間
- 基礎のひび割れ:乾燥収縮や地震によって生じるコンクリートのクラック
- 基礎断熱材:特に基礎外断熱の場合、断熱材そのものが侵入経路となる
これらの箇所は、シロアリが地中から建物内部へとアクセスするための主要なルートです。
早期発見のためには、まず自分でできる範囲の点検を習慣にすることが大切でしょう。
例えば、建物の外周を定期的に見て回り、基礎の表面に「蟻道」がないかを確認します。
蟻道は、シロアリが土や自身の分泌物で作り上げるトンネル状の道で、外部の光や乾燥から身を守りながら移動するために使用します。
もし基礎の表面に泥の筋のようなものが見つかったら、それはシロアリが侵入しているサインかもしれません。
また、床下点検口がある場合は、懐中電灯を使って床下を覗いてみることも有効です。
基礎の内側や配管の周りに蟻道がないか、木材部分にかじられたような跡や変色がないかを確認してください。
ただし、これらのセルフチェックには限界があります。
特に基礎断熱が施工されている場合や、床下の奥深くなど、専門家でなければ確認できない場所が多いためです。
そこで重要になるのが、プロの目による定期的な点検です。
シロアリ駆除の専門業者は、専用の機材や豊富な経験を基に、私たちが気づかないような微細な兆候も見逃しません。
ファイバースコープを使って狭い隙間を確認したり、打診によって木材内部の空洞を探ったりと、多角的な調査を行います。
構造上の弱点を熟知しているからこそ、リスクの高い箇所を重点的にチェックし、被害の有無を正確に判断することができるのです。
弱点を知ることは、不安を煽るためではなく、的確な対策を講じるための第一歩です。
自宅のどこにリスクが潜んでいるかを把握し、適切な点検を行うことで、シロアリ被害から大切な家を守ることにつながります。
被害を防ぐために重要な定期的な点検
新築のシロアリのベタ基礎の安全性を過信せず、被害を未然に防ぐために最も効果的で重要な対策は、専門家による定期的な点検です。
シロアリの被害は、静かに、そして見えないところで進行します。
私たちが異変に気づいたときには、すでに建物の耐久性を損なうほど被害が拡大しているケースも少なくありません。
そうなる前に、シロアリが侵入、あるいは活動を始めた初期段階で発見し、対処することが極めて重要となります。
専門業者による点検は、一般的に5年に一度の頻度で受けることが推奨されています。
これは、新築時に行われる防蟻処理の薬剤効果が、おおむね5年で切れることに起因します。
保証期間が切れるタイミングで点検を受け、必要に応じて再処理を行うことで、防蟻効果を継続させることができます。
定期点検では、専門家が以下のような項目を徹底的に調査します。
- 外周調査:基礎のひび割れ、蟻道の有無、建物周辺の木材などのチェック
- 床下調査:床下の湿気状態、木部の食害、蟻道・蟻土の有無、カビの発生などを確認
- 被害箇所調査:実際に被害が疑われる箇所を打診や目視で詳細に調査
- その他:水回りや玄関など、シロアリが好みやすい環境のチェック
プロの点検員は、シロアリの生態や建物の構造を熟知しています。
そのため、シロアリがどこから侵入し、どのように活動範囲を広げていくかを予測しながら調査を進めることができます。
例えば、過去の事例から特定の配管周りがリスクが高いと判断すれば、そこを重点的に確認します。
また、床下の湿度を測定し、シロアリが生息しやすい環境になっていないかを評価するなど、総合的な診断を下します。
点検の結果、シロアリの生息や被害が確認されなかったとしても、それで終わりではありません。
点検報告書をもとに、将来的なリスクを低減するための予防策についてアドバイスを受けることができます。
例えば、「建物の周りに木材を置かないようにする」「換気扇を設置して床下の湿気対策を行う」といった、日常生活の中で実践できる具体的な改善提案です。
定期的な点検は、いわば住宅の健康診断のようなものです。
診断を受けることで、現在の健康状態を把握し、病気(シロアリ被害)を早期に発見・治療することができます。
点検にかかる費用は、決して安いものではありませんが、被害が拡大してから駆除と修繕を行う費用と比較すれば、はるかに経済的です。
新築時の安心感を維持し、長く快適に住み続けるために、定期点検を住宅メンテナンスの計画に必ず組み込むようにしましょう。
新築のシロアリのベタ基礎を守るための対策
- ➤新築時に行うべき効果的なシロアリ予防
- ➤シロアリ対策にかかる費用の目安
- ➤シロアリの駆除が必要になった場合の対処法
- ➤知っておきたい防蟻処理の保証内容
- ➤まとめ:新築のシロアリのベタ基礎の知識で家を守る
新築時に行うべき効果的なシロアリ予防
新築のシロアリのベタ基礎の家を建てる際、将来の被害リスクを最小限に抑えるためには、建築段階での予防策が最も重要かつ効果的です。
完成後では対策が難しい箇所にも、建築中であれば容易に薬剤処理や物理的防除を施すことができます。
これから家を建てる方、あるいは現在建築中の方は、どのような予防策が講じられているか、必ず確認するようにしましょう。
主なシロアリ予防策は、「薬剤処理」と「物理的防除」の2つに大別されます。
薬剤による予防(化学的防除)
これは、シロアリが嫌がる、あるいは致死効果のある薬剤を散布・塗布することで、シロアリの侵入を防ぐ方法です。
建築基準法では、地面から1m以内の木部(土台、柱など)に防蟻処理を施すことが義務付けられています。
しかし、より万全を期すためには、以下の2つの処理を組み合わせることが一般的です。
一つは「土壌処理」です。
これは、建物の基礎の内側や外周の土壌に薬剤を散布し、シロアリが地中から基礎へ到達するのを防ぐバリアを形成するものです。
ベタ基礎であっても、配管周りや打ち継ぎ部からの侵入リスクがあるため、土壌処理は非常に有効な対策となります。
もう一つは「木部処理」です。
これは、土台や大引、柱といった木材の表面に薬剤を塗布または吹き付ける方法です。
万が一シロアリが基礎を突破して侵入したとしても、薬剤処理された木材を食べることを防ぎ、被害の拡大を食い止める効果があります。
これらの薬剤には様々な種類があり、安全性や持続性も異なるため、どのような薬剤を使用するのか施工会社に確認することが望ましいです。
物理的防除
薬剤に頼らず、物理的なバリアによってシロアリの侵入を防ぐ方法も注目されています。
代表的なものに「防蟻シート」があります。
これは、薬剤を含ませたシートや、シロアリが通り抜けられない目の細かいステンレスメッシュなどを基礎の下に敷設する工法です。
基礎の底面全体を覆うことで、下方からの侵入を物理的にブロックします。
また、配管貫通部の隙間を、防蟻成分を含んだパテやシール材で確実に埋めることも重要な物理的防除の一つです。
これらの対策は、それぞれ単体で行うよりも、複数組み合わせることでより高い予防効果を発揮します。
例えば、土壌処理を行った上で、さらに基礎の下に防蟻シートを敷設し、木部処理も徹底するといった形です。
建築会社や工務店によって標準仕様の防蟻対策は異なります。
どのような対策が標準で含まれているのか、オプションで追加できる対策はあるのかを事前にしっかりと確認し、納得のいく予防策を講じることが、後々の安心につながるのです。
シロアリ対策にかかる費用の目安
シロアリ対策を考える上で、やはり気になるのが費用でしょう。
対策費用は、予防か駆除か、建物の規模や構造、選択する工法によって大きく変動します。
ここでは、一般的な木造住宅における費用の目安を、いくつかのケースに分けてご紹介します。
新築時の予防費用
新築時に行う予防処理は、最もコストパフォーマンスが高いと言えます。
施工が容易であり、建物全体にムラなく処理を施せるためです。
一般的な坪数30坪程度の住宅であれば、薬剤による土壌処理と木部処理を合わせて、おおよそ15万円から30万円程度が相場となることが多いです。
これは、住宅の建築費用全体から見れば決して大きな金額ではありません。
この初期投資を惜しむことで、将来的に何倍もの駆除・修繕費用がかかるリスクを考えれば、必須の経費と捉えるべきでしょう。
防蟻シートなどの物理的防除を追加する場合は、さらに費用が加算されます。
既存住宅の予防(再処理)費用
新築時の防蟻処理の効果は、永久ではありません。
薬剤の効果が切れる5年を目安に、再処理を行うことが推奨されます。
既存住宅への再処理は、床下に作業員が潜って作業を行うため、新築時よりも手間がかかり、費用もやや高くなる傾向にあります。
30坪程度の住宅で、12万円から25万円程度が目安です。
床下の構造が複雑であったり、点検口からの進入が困難であったりする場合は、追加料金が発生することもあります。
シロアリ被害発生後の駆除費用
万が一、シロアリの被害が発生してしまった場合の駆除費用は、被害の範囲や深刻さによって大きく異なります。
被害が限定的であれば、予防処理と同程度の費用で済むこともありますが、被害が広範囲に及んでいる場合は、30万円以上、場合によっては50万円を超えることも珍しくありません。
駆除作業は、被害箇所への薬剤注入や、ベイト工法(毒餌を巣に持ち帰らせて巣ごと根絶する方法)などが用いられ、予防よりも高度な技術と手間を要するため、単価が高くなります。
さらに、駆除費用に加えて、被害を受けた木材の修繕・交換費用が別途必要になることを忘れてはなりません。
土台や柱の交換となると、大掛かりなリフォームとなり、100万円単位の費用がかかる可能性もあります。
| 対策の種類 | 費用相場(30坪) | 備考 |
|---|---|---|
| 新築時の予防 | 15万円~30万円 | 建築費用に含まれることが多い |
| 既存住宅の予防 | 12万円~25万円 | 5年ごとの再処理が目安 |
| 被害発生後の駆除 | 20万円~50万円以上 | 被害状況により大きく変動。修繕費は別途。 |
このように、費用面から見ても、被害が発生する前の「予防」がいかに重要であるかがお分かりいただけると思います。
定期的な点検と予防処理は、結果的に最も経済的なシロアリ対策なのです。
シロアリの駆除が必要になった場合の対処法
自宅でシロアリの羽アリを見つけたり、基礎に蟻道を発見したりするなど、シロアリの存在が疑われる状況になった場合、冷静な対処が求められます。
パニックになり、市販の殺虫スプレーなどをむやみに使用することは避けるべきです。
目に見えるシロアリにスプレーを噴射しても、それは巣の中にいる無数のシロアリのほんの一部に過ぎません。
むしろ、薬剤を嫌がったシロアリが危険を察知し、別の場所に移動して被害を拡大させてしまう可能性があるため、逆効果になることさえあります。
シロアリの駆除が必要だと判断した場合、まず行うべきは、信頼できる専門業者に連絡し、詳細な調査を依頼することです。
複数の業者から見積もりを取り、調査内容や提案される駆除方法、費用、保証内容などを比較検討することをお勧めします。
専門業者が行う主な駆除方法は、主に「バリア工法」と「ベイト工法」の2つです。
バリア工法
バリア工法は、薬剤を床下や木部、外周の土壌に散布・注入することで、建物全体を薬剤のバリアで覆い、シロアリを駆除・侵入防止する方法です。
即効性が高く、既存の被害を食い止め、新たな侵入も防ぐ効果が期待できます。
従来から行われている一般的な工法であり、多くの業者で採用されています。
ただし、薬剤を散布するため、化学物質に過敏な方や、小さなお子様、ペットがいるご家庭では、使用する薬剤の安全性について十分に確認する必要があります。
ベイト工法
ベイト工法は、シロアリが好む餌(ベイト剤)に、脱皮を阻害するなどの遅効性の薬剤を混ぜ、専用の容器(ステーション)に入れて建物の外周に設置する方法です。
餌を見つけた働きアリが巣に持ち帰り、巣全体の仲間で分け合うことで、女王アリや王アリも含めて巣ごと根絶やしにすることを目的とします。
薬剤をむやみに散布しないため、人や環境への負荷が少なく安全性が高いのが特徴です。
ただし、効果が現れるまでに数ヶ月単位の時間がかかることや、定期的なモニタリングが必要で、ランニングコストが発生する場合があります。
どちらの工法が適しているかは、被害の状況、建物の構造、居住者のライフスタイルなどによって異なります。
専門業者は、これらの要素を総合的に判断し、最適な駆除プランを提案してくれます。
業者を選ぶ際には、実績が豊富で、建設業許可やしろあり防除施工士といった資格を保有しているかどうかも、信頼性を判断する上での重要な指標となります。
安さだけで業者を選ばず、しっかりとした調査と丁寧な説明をしてくれる業者に依頼することが、確実な駆除への近道です。
知っておきたい防蟻処理の保証内容
シロアリの予防処理や駆除工事を行うと、施工業者から「保証書」が発行されるのが一般的です。
この保証は、万が一、保証期間内にシロアリが再発生した場合に、無償で再施工を行うことを約束するものです。
この保証制度を正しく理解しておくことは、業者選びや将来の安心のために非常に重要です。
まず、保証期間についてです。
多くの業者では、薬剤処理(バリア工法)の場合、保証期間を「5年間」と設定しています。
これは、使用される薬剤の残効性がおおむね5年であることに基づいています。
5年が経過すると薬剤の効果が薄れてくるため、保証を継続するためには、再度点検と予防処理が必要となります。
ベイト工法の場合は、契約期間中はずっと保証が続くという形が一般的です。
次に、保証の対象範囲です。
保証書には、どのような場合に保証が適用されるのかが明記されています。
通常は、「施工した建物から、保証期間内にヤマトシロアリまたはイエシロアリが発生した場合」に、無償での再駆除工事が保証されます。
ここで注意したいのが、保証はあくまで「シロアリの再発に対する再施工」が対象であるという点です。
シロアリによって被害を受けた建物の修復費用までを保証するものではないケースがほとんどです。
一部の業者では、修繕費用を補償する保険を付帯している場合もありますが、その分、施工費用が高くなる傾向にあります。
契約前に、修繕費用の補償が含まれているかどうかを必ず確認しましょう。
また、保証が適用されない「免責事項」についても理解しておく必要があります。
例えば、以下のようなケースでは保証の対象外となることがあります。
- 建物の増改築を行った場合
- 地震や水害などの天災によって建物が損壊した場合
- 保証期間中の定期点検を拒否した場合
- アメリカカンザイシロアリなど、特殊な外来種シロアリが発生した場合
特に、増改築を行うと、薬剤処理がされていない部分ができてしまい、そこが新たな侵入経路となるリスクがあるため、保証が失効することが多いです。
増改築を計画している場合は、事前に施工業者に相談する必要があります。
保証書は、ただ保管しておくだけでなく、その内容を隅々まで読み込み、どのようなサービスが受けられるのか、どのような場合に保証が切れてしまうのかを正確に把握しておくことが大切です。
信頼できる業者は、保証内容についても丁寧に説明してくれます。
不明な点があれば、契約前に遠慮なく質問し、納得のいく形で契約を結ぶようにしてください。
まとめ:新築のシロアリのベタ基礎の知識で家を守る
これまで、新築のシロアリのベタ基礎が持つ弱点から、具体的な対策、費用、保証に至るまで、多角的に解説してきました。
「ベタ基礎だからシロアリは大丈夫」という考えが、いかに危険であるかをご理解いただけたのではないでしょうか。
現代の住宅において、ベタ基礎がシロアリ対策の基本であり、非常に有効な工法であることは間違いありません。
しかし、その強固なコンクリートにも、配管周りの隙間、打ち継ぎ部、ひび割れといった弱点が存在します。
さらに、住宅の高断熱化に伴い普及した基礎断熱が、シロアリに安全な侵入経路と快適な住処を提供してしまうという新たなリスクも生まれています。
これらの事実を知らずにいると、気づかぬうちに被害が進行し、取り返しのつかない事態になりかねません。
大切なマイホームをシロアリの脅威から守るために最も重要なことは、正しい知識を持ち、適切な対策を継続して行っていくことです。
まず、新築時には、どのような防蟻対策が施されているかを確認し、必要であれば追加の対策を検討することが肝心です。
そして、入居後は、薬剤の効果が切れる5年を目安に、必ず専門家による定期的な点検を受けることを習慣にしてください。
この定期点検こそが、被害を未然に防ぎ、あるいは初期段階で発見するための最も確実な方法です。
点検や予防にかかる費用は、決して無駄な出費ではありません。
むしろ、将来発生するかもしれない高額な駆除費用や修繕費用から家を守るための、賢明な投資と言えるでしょう。
シロアリ対策は、一度行ったら終わりというものではなく、住宅のメンテナンスの一環として、長期的な視点で取り組む必要があります。
新築のシロアリのベタ基礎に関する正しい知識を武器に、計画的な予防と点検を実践することで、いつまでも安心して暮らせる住環境を維持していきましょう。
この記事が、その一助となれば幸いです。
- ➤新築のベタ基礎もシロアリ被害のリスクはゼロではない
- ➤配管貫通部や打ち継ぎ部が主な侵入経路となる
- ➤コンクリートの微細なひび割れもシロアリには十分な道となる
- ➤基礎断熱材はシロアリの温床になりやすく特に注意が必要
- ➤基礎外断熱は被害の発見が遅れやすくリスクが高い工法
- ➤定期的な点検が被害の早期発見と予防につながる
- ➤新築時の予防策が最も効果的でコストパフォーマンスが高い
- ➤予防策には薬剤処理と物理的防除の組み合わせが有効
- ➤予防費用は30坪で15万円から30万円程度が目安
- ➤被害発生後の駆除費用は高額になり修繕費も別途必要
- ➤駆除方法はバリア工法とベイト工法の2種類が主流
- ➤市販の殺虫剤の自己判断での使用は被害を拡大させる恐れ
- ➤防蟻処理の保証期間は一般的に5年間
- ➤保証はシロアリの再発に対する再施工が基本で修繕費は対象外が多い
- ➤シロアリ対策は長期的な住宅メンテナンスの一環と捉えるべき