
「契約したけれど、やっぱり他のメーカーにしたい……。
でも、もう払ってしまった100万円は戻ってこないのかな?」
一生に一度の家づくり。
そのプレッシャーの中で判断を誤り、後悔して眠れない夜を過ごしている方は、実はあなただけではありません。
私自身、住宅業界のリサーチを続ける中で、営業マンの勢いに押されて契約してしまい、後になって「本当にこれで良かったのか」と青ざめる方を数多く見てきました。
結論から申し上げますと、ハウスメーカーの契約金が返ってくるかどうかは、「契約のどの段階にあるか」と「支払ったお金の名目」によって完全に異なります。
全額戻ってくるケースもあれば、残念ながら一円も戻らず、さらに追加請求される最悪のケースも存在するのが現実です。
この記事では、住宅業界リサーチャーである私が、徹底的に調べ上げた「解約と返金のルール」を包み隠さず解説します。
感情論ではなく、法的・実務的な観点から、あなたが今の状況でどう動くのが最善かを一緒に考えていきましょう。
損をするにしても、その額を最小限に食い止める方法はあります。
まずは深呼吸して、現状を整理するところから始めてください。
- 申込金は返ってくるが手付金は原則放棄になる
- 契約後の解約では「実費精算」が請求される
- 住宅ローン特約なら白紙解約で全額戻る
- 設計料や地盤調査費などの実費相場がわかる
- 解約時の交渉で少しでも損を減らす方法
- 契約前に確認すべき解約条項のポイント
- トラブルを避けるための正しい手順
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ハウスメーカーの契約金は返ってくる?解約の基本ルールとは
- 申込金と手付金の違いを理解する
- 契約のタイミングと法的拘束力
- クーリングオフは適用されるのか?
まず最初に、一番大切な基礎知識を整理しておきましょう。
「お金を払った」といっても、それが「申込金」なのか「手付金(契約金)」なのかで、天国と地獄ほどの差があります。
多くのトラブルは、この言葉の定義があいまいで、私たち施主側とハウスメーカー側の認識がズレていることから発生します。
ここを理解するだけで、今のあなたの立ち位置が明確に見えてくるはずです。
申込金と手付金の違いを理解する

あなたが支払ったお金、領収書にはなんと書かれているでしょうか?
まずはそこを確認してください。
一般的に、ハウスメーカーとのやり取りで発生するお金には以下の2種類があります。
- 申込金(仮契約金):契約前の「意思表示」として支払うお金(5万〜10万円程度)。
- 手付金(契約金):正式な工事請負契約時に支払うお金(100万円〜請負金額の10%程度)。
「申込金」であれば、原則として契約に至らなかった場合は全額返金されます。
これはあくまで「優先的に話をさせてください」という予約金のような性質だからです。
一方で、「手付金」として支払った場合は、話がまったく変わってきます。
これは法的に「解約手付」としての性質を持つことが多く、施主側の都合で解約する場合、この手付金を放棄(ハウスメーカーにあげる)することで契約を解除できる、というルールが民法で定められています。
契約のタイミングと法的拘束力
「まだ判子は押していないけど、お金は振り込んだ」
「仮契約だと言われて署名した」
このあたりの線引きが非常に難しいですよね。
ハウスメーカーによっては、「仮契約」という言葉を使って、事実上の本契約(工事請負契約)を結ばせようとするケースがあります。
重要なのは、その書類のタイトルが「工事請負契約書」になっているかどうかです。
- 敷地調査申込書 / 設計申込書:これにサインしてお金を払っただけなら、まだ本契約ではありません。実費(地盤調査費など)を引かれて返金される可能性が高いです。
- 工事請負契約書:これに署名・捺印し、手付金を支払った時点で、法的に強い拘束力が発生します。
営業マンが「とりあえず仮契約ですから、あとで変更できますよ」と言ったとしても、書類上「工事請負契約書」となっていれば、それは立派な契約です。
口約束よりも書面が優先されるのが契約の世界の非情な現実です。
クーリングオフは適用されるのか?

「契約してしまったけど、クーリングオフで無効にできないの?」と考える方も多いでしょう。
実は、住宅の契約でもクーリングオフは適用可能です。
しかし、そこには非常に厳しい条件があります。
- 契約場所が、ハウスメーカーの事務所やモデルハウス「以外」であること(自宅への訪問販売や、喫茶店での契約など)。
- 契約書面を受け取ってから8日以内であること。
逆に言えば、自分から住宅展示場や事務所に出向いて契約した場合は、クーリングオフの対象外となります。
多くのハウスメーカーは、トラブルを避けるために必ず事務所やモデルハウスの中で契約手続きを行います。
そのため、現実的にはクーリングオフを使って無傷で解約できるケースは非常に稀だと言わざるを得ません。
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ハウスメーカーの契約金は返ってくる?タイミング別の返金条件
- 契約前の「申込金」なら全額返金が原則
- 契約後の「手付金」は原則として放棄になる
- 住宅ローン特約なら白紙解約で戻ってくる
それでは、具体的なシチュエーション別に「お金が戻ってくる可能性」を見ていきましょう。
あなたが今どの段階にいるかによって、打てる手は変わります。
時には「損切り」を決断することが、将来的な大怪我を防ぐ最良の手段になることもあります。
契約前の「申込金」なら全額返金が原則

もしあなたがまだ「工事請負契約書」にハンコを押していない段階なら、まずは安心してください。
この段階で支払っている「申込金(預かり金)」は、契約に至らなかった場合、全額返還されるのが業界の商慣習であり、法律上の原則です。
ただし、注意点がひとつあります。
もし申込金の段階で、「地盤調査」や「敷地測量」をすでに行ってもらっている場合、その実費分だけは差し引いて返金となるケースが一般的です。
これは実際に業者が動いてコストがかかっているため、やむを得ない出費と言えます。
「契約しないなら申込金は返せません」と脅してくる悪質な業者も稀にいますが、法的根拠は薄いです。
毅然とした態度で返金を求めましょう。
契約後の「手付金」は原則として放棄になる
ここが最も辛い部分ですが、正直にお話しします。
「工事請負契約」を結んだ後に、「やっぱり別のメーカーがいい」「親に反対された」といったこちらの都合(自己都合)で解約する場合、支払った手付金は戻ってこない(手付流し)と覚悟してください。
さらに恐ろしいのは、契約から時間が経ち、設計打ち合わせが進んでいる場合です。
この場合、手付金の放棄だけでは済まず、「既に行った業務に対する報酬(設計料など)」や「発注済みの資材費」などを違約金として追加請求される可能性があります。
「手付金100万円を諦めるだけで済むならマシだった……」ということがあります。
契約後の解約は、それほどリスクが大きいのです。
住宅ローン特約なら白紙解約で戻ってくる

契約後であっても、唯一「全額返金」される強力な特約があります。
それが「住宅ローン特約」です。
これは、「もし住宅ローンの審査に通らなかったら、契約を白紙に戻して、お金も全額返しますよ」という約束です。
- 事前審査は通ったが、本審査で落ちてしまった場合。
- 希望する金額の融資が受けられなかった場合。
こうした場合、あなたの責任ではないため、契約はなかったことになり、手付金も全額戻ってきます。
もし解約理由が資金繰りの悪化やローン審査の結果にあるなら、まずは契約書の「ローン特約」の条項を確認してください。
これが適用できれば、金銭的なダメージはゼロで済みます。
ハウスメーカーの契約金は返ってくる?差し引かれる実費の内訳
- 契約金から引かれる「実費」とは何か
- 設計料や地盤調査費の相場
- 違約金が発生するケースと金額目安
「手付金は返します。ただし、これまでにかかった経費は引かせてもらいますね」
解約を申し出たとき、ハウスメーカー側からこう言われることがよくあります。
この「経費(実費)」の内訳が不透明で、トラブルになるケースが後を絶ちません。
一体何にいくらかかるのか、相場を知っておくことで、不当な高額請求に対抗できるようになります。
契約金から引かれる「実費」とは何か

解約時に請求される「実費」とは、契約履行のためにハウスメーカーがすでに支出してしまった費用のことです。
これらは「損害賠償」の一部として扱われることが多く、契約書の約款にも「解約時は、既に行った業務の対価を支払う」といった文言が含まれているはずです。
- 印紙代(契約書に貼った収入印紙)
- 地盤調査費用
- 敷地測量費用
- 建築確認申請費用(申請済みの場合)
- 設計料・積算業務料
特に揉めるのが「設計料」と「人件費(営業経費)」です。
「何度も打ち合わせをしたのだから」と高額な人件費を請求されることがありますが、どこまでが正当な請求かは慎重に見極める必要があります。
設計料や地盤調査費の相場
では、具体的にどれくらいの金額が引かれるのでしょうか。
一般的な相場をまとめてみました。
あくまで目安ですが、これより極端に高い場合は内訳を詳しく聞くべきです。
- 収入印紙代:1万〜3万円程度(契約金額による)。これは絶対に戻ってきません。
- 地盤調査費:5万〜10万円程度。スウェーデン式サウンディング試験が一般的です。
- 敷地測量費:5万〜15万円程度。土地の形状や広さによります。
- 設計料:ここがブラックボックスです。基本設計だけで数十万円請求されることもあれば、契約解除のペナルティとして請負金額の数%を請求されることもあります。
特に設計料については、「まだ間取り図を数枚書いただけじゃないか!」と思っても、建築士が動いた分の技術料として10万円〜30万円程度請求されることは珍しくありません。
違約金が発生するケースと金額目安
契約書には「違約金」についての条項もあります。
多くのハウスメーカーでは、「手付金の放棄」または「請負代金の〇〇%」という形で違約金を設定しています。
着工直前や着工後の解約となると、資材の発注キャンセル料や職人への補償なども加わり、数百万〜一千万円単位の請求になることもあります。
「まだ家も建っていないのに……」と思う気持ちは痛いほど分かりますが、契約とはそれほど重い約束なのです。
だからこそ、解約を決意したなら、一日でも早く申し出ることが、傷を浅くする唯一の方法と言えます。
ハウスメーカーの契約金が少しでも返ってくるための交渉ポイント
- 解約の意思は書面で早めに伝える
- 実費の明細提示を求めて精査する
- ハウスメーカー側に落ち度がある場合
「もう手付金は諦めるしかないのか……」
そう悲観するのはまだ早いです。
リサーチャーとして様々な事例を見てきましたが、交渉のやり方次第で、返金額が変わるケースは実際にあります。
感情的に怒鳴り込むのではなく、冷静かつ論理的に交渉するためのポイントをお伝えします。
解約の意思は書面で早めに伝える

解約を決めたら、担当の営業マンに電話で伝えるだけでなく、必ず「記録に残る形」で意思表示をしてください。
「解約したい」と伝えたのに、「一度会ってお話ししましょう」と引き延ばされ、その間に発注が進んでしまったら、その分の費用まで請求されかねません。
- メールで解約の意思と日付を送信する。
- 必要であれば内容証明郵便を送る。
「〇月〇日に解約を申し出ましたよね?
それ以降の実費請求はおかしいですよね?」と言える証拠を作ることが、自分の身を守ります。
実費の明細提示を求めて精査する
請求された実費金額を鵜呑みにしてはいけません。
必ず「詳細な明細書」の提示を求めてください。
「諸経費一式 50万円」といったどんぶり勘定は認めない姿勢が大切です。
「設計料」であれば、具体的に誰が何時間稼働したのか。
「営業経費」であれば、交通費などの実費なのか、ただの手数料なのか。
細かくツッコミを入れることで、「この客は知識があるから、適当な請求はできないな」と相手に思わせることが重要です。
結果として、不当に上乗せされた費用が削られることがあります。
ハウスメーカー側に落ち度がある場合

もし、解約の原因がハウスメーカー側にある場合は、強気で全額返金を主張すべきです。
- 営業マンが「絶対にこの金額でできます」と嘘をついていた。
- 重要な事項(日当たりや法令制限など)についての説明がなかった、または間違っていた。
- 契約内容と実際のプランが著しく異なっている。
このような「債務不履行」や「説明義務違反」がある場合、手付金を放棄する必要はなく、むしろ損害賠償を請求できる可能性すらあります。
「言った言わない」の水掛け論になりやすいので、打ち合わせ記録や録音データなどが残っていないか、もう一度確認してみてください。
ハウスメーカーの契約金が返ってくるか不安な人が契約前にすべきこと
- 「とりあえず契約」の危険性と営業トーク
- 契約書の「解約条項」を必ず確認する
- 返金トラブルを避けるための自衛策
ここまでは解約してしまった後の話をしてきましたが、もしこの記事を読んでいるあなたが「これから契約しようか迷っている」段階なら、全力で伝えたいことがあります。
「不安が残るなら、絶対にハンコを押さないでください」
後悔しないために、契約前にこれだけはやっておいてほしい自衛策をお話しします。
「とりあえず契約」の危険性と営業トーク

「今月中に契約すれば、キャンペーンで100万円引きになります!」
「とりあえず契約だけしておいて、プランは後でゆっくり決めましょう」
これらは営業マンの常套句です。
展示場に行くと必ずと言っていいほど聞かされます。
しかし、「とりあえず契約」なんてものは存在しません。契約は契約です。
一度契約してしまえば、あなたは「釣った魚」です。
その後の打ち合わせで金額が上がっても、他社と比較して断りたくても、常に「手付金放棄」という人質を取られた状態での交渉になってしまいます。
これほど不利なことはありません。
契約書の「解約条項」を必ず確認する
契約書にサインする前に、重要事項説明書や約款の「解約・解除」に関する項目を、目を皿のようにして読んでください。
- 解約時の違約金は何%か?
- 「設計料」や「諸経費」の計算方法は明記されているか?
- 手付金の扱いはどうなっているか?
分からない言葉があれば、遠慮なく質問し、その回答をメモに残しておきましょう。
「万が一解約する場合、最大でいくらかかりますか?」とストレートに聞くのも有効です。
返金トラブルを避けるための自衛策

最後に、私が実践している究極の自衛策をお伝えします。
それは、「手付金は最小限の額にする」ことです。
ハウスメーカー側は「契約金として100万円入れてください」と言ってくることが多いですが、法律上、手付金の額に決まりはありません。
「手持ちのお金がないので、10万円(あるいは50万円)にしてほしい」と交渉することは可能です。
もし解約することになっても、預けている額が少なければ、被害額も少なくて済みます。
契約のハードルを上げる意味でも、安易に高額な手付金を支払わないことが、自分の身を守ることに繋がります。
まとめ:ハウスメーカーの契約金が返ってくるかは状況次第
ここまで、ハウスメーカーの契約金返金について、かなりシビアな現実をお話ししてきました。
「お金が戻ってくるか」は、結局のところ、あなたが契約のどのフェーズにいて、どのような名目でお金を支払ったかに尽きます。
もし既に手付金を払ってしまっているなら、残念ながら全額回収は難しいかもしれません。
しかし、明細を精査し、冷静に交渉することで、取り戻せる金額が増える可能性は残されています。
そして何より大切なのは、この経験を次に活かすことです。
もし今回の契約を解除することになったとしても、それは「より良い家づくりをするための勉強代」だったと割り切ることも必要かもしれません。
無理をして納得できない家を建てるより、一時的な損失を出してでもリセットする方が、長い人生で見ればプラスになることだってあるのです。
今回の失敗を糧に、次は焦らず、複数の会社をじっくり比較して、本当に信頼できるパートナーを見つけてください。
- 申込金は契約前なら原則全額返金される
- 契約後の手付金は解約時に放棄となるのが基本
- 工事請負契約書への署名捺印が運命の分かれ道
- 契約後の解約は実費(設計料など)が追加請求される
- 住宅ローン特約による解約なら全額返金される
- 自分から出向いた契約はクーリングオフできない
- 解約の意思表示は早ければ早いほど傷が浅い
- 解約時は実費の明細書を必ず請求し精査する
- 曖昧な諸経費は交渉で減額できる可能性がある
- ハウスメーカー側に虚偽説明等の落ち度があれば戦える
- 契約前の「とりあえず契約」は絶対にしてはいけない
- 手付金の額は交渉して低く抑えるのが自衛策
- 不安なまま家づくりを進めるより解約も一つの勇気
- 次の契約では必ず複数社を比較検討すること
- 今回の損失は理想の家への勉強代と捉え前に進む
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